万人に開かれた海

海洋環境の衛星観測と観測データの公開

気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)

期間:2017年12月打上げ~運用中
機関:国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)

「しきさい」に搭載された多波長光学放射計は、250mの空間解像度と19の観測波長によって、クロロフィルa濃度、懸濁物質濃度、有色溶存有機物、海面水温、流れ藻等を観測できます。得られた観測データは一般に無償公開され、気候変動による植物プランクトン分布や富栄養化、高水温域分布等の変動監視、数値モデルとの比較や同化を通じた海洋環境予測の高精度化などに貢献します。

「しきさい」搭載の多波長光学放射計SGLIがとらえた2020年10月1日の九州南西部の250m解像度のクロロフィルa濃度分布
この時期に有明海北西域で赤潮が報告されており(https://akashiwo.jp/)、それに対応する海域(赤矢印)でクロロフィルa濃度が高くなっている様子が確認できる。
「しきさい」搭載の多波長光学放射計SGLIの大気補正済みの赤・緑・青波長の海面反射率による2020年5月17日の相模湾周辺のRGB合成画像
白色の領域は陸や雲域に対応。5月上旬に相模湾に現れた白潮の分布(赤矢印で示した水色の領域)が捉えられていた。画像データは研究者や一般に公開され、新聞等でも取り上げられた。
参考:「しきさいポータル」(宇宙航空研究開発機構 衛星利用運用センター、https://shikisai.jaxa.jp/

水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)と高性能マイクロ波放射計(AMSR)シリーズ

期間:2002年6月打上げ~運用中
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)

「しずく」に搭載された高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)は、2002年6月打上げのAMSR-E以降、AMSRシリーズとして観測を継続しており、マイクロ波放射計としては世界最高の空間解像度と、雲を透過して地表や海面を観測可能なのが特徴であり、海面水温、海氷密接度、降水量、積算水蒸気量、積雪深、土壌水分量等を観測できます。得られた観測データは一般に無償公開され、世界各国の気象機関で現業利用されている他、気候変動による海氷の変動監視、海況監視や漁場把握、数値モデルとの比較や同化を通じた海洋環境予測の高精度化などに貢献しています。現在運用中のAMSR2の後継となるAMSR3を2023年度打ち上げに向けて開発中です。

「しずく」搭載AMSR2が捉えた、2020年9月13日の北極の海氷分布
この日に2020年の最小面積(355万平方km)を記録し、JAXAと国立極地研究所で合同プレスリリースを行った。この年間最小値は、2012年9月に同じくAMSR2が観測した衛星観測史上最小値に次ぐ2番目の小ささだった。極域の海氷面積の変動は地球温暖化の重要な指標のひとつであり、雲を透過し、かつ、昼夜を問わず観測可能なマイクロ波放射計は、極域研究にとって必須の観測ツールとなっている。
AMSRシリーズによる観測データを可視化する「AMSR地球環境ビューア」の表示例
複数の物理量の重畳、拡大・縮小・ピクセルのデータ表示・時系列表示などの機能を持つ。
参考:「GCOM-W1 水循環変動観測衛星」(宇宙航空研究開発機構 衛星利用運用センター、https://suzaku.eorc.jaxa.jp/GCOM_W/index_j.html